今年、初めて参加される多くの方々は「打ち水で本当にヒートアイランドを抑えるような、本当にそんなに大きな効果が得られるのか?」と疑問をお持ちでしょう。ご安心ください。打ち水はすごいんです。
1平方メートルあたり1mmの打ち水で、どれだけの効果があがるかを正確に述べるのは、ケースバイケースなので難しいですが、地上気温を2度以上は下げられるのではないかと予想しています。そして気温が2度下がった場合、なんと最大4%程度の電力量の削減が期待されます。これはすごい!

その効果については以下のように試算しました。参考にしてください。

※このテキストは昨年2003年に開催された「大江戸打ち水大作戦」の「打ち水の効果」に修正、加筆をしたものです。
打ち水の試算

1・散水(打ち水)が可能な面積の試算

想定される散水対象域を大きく以下の4つ分けます。


1)道路、歩道といった公共用地の舗装面
道路面への散水による交通上の障害や歩行者へのしぶきによるトラブルを考えると、現実的には片側2車線の内の中央より1車線と歩道の散水まででしょう。

2)建物敷地内の浸透域、不浸透域
公共、民間の建物敷地内(屋根、屋上面を除く)では浸透域、不浸透域を問わず散水可能でしょう。
特に、公共公益施設用地は面積的にも大きく、かつ建坪率も小さいので散水可能面積が大きいでしょう。


3)建物の屋根面、屋上面
・面積も大きいので散水効果は大きいのですが、中高層の建物の場合は、地上の気温緩和というよりは、建物へ屋上から伝わる熱を減らして空調に必要なエネルギーを直接的に減らす効果が期待されます。(ただし、上層階の効果に限られてしまうでしょう)
・中低層の商業、業務建物屋上面に散水した方が効果的かと思われます。
・住宅屋根面も効果的でしょう。


4)公園、緑地
・もともと表面温度が低い植生面でもある程度の効果はあると考えられます。
・また植生面以外でも裸地、舗装面などがあります。
・東京都区の土地利用と建坪率の情報にもとづいて散水面積を試算すると次のようになります。

区分 敷地面積
(平方キロメートル)
建坪率を考慮した散水可能
面積割合
散水可能面積
(平方キロメートル)
道路用地 95.4 50% 47.7
公共公益施設用地(地上) 70.4 70% 49.3
商業業務用地(地上) 83.9 40% 33.6
商業業務用地(屋上) 30% 25.2
一般低層住宅地(地上) 137.0 50% 68.5
密集低層住宅地(地上) 43.3 30% 13.0
中高層住宅地(地上) 29.4 50% 14.7
工業用地(地上) 22.9 50% 11.5
公園緑地等 41.5 50% 20.8
合計 523.8 - 284.1


2・必要水量、散水時間


水の気化熱から水量を算出すると、水の気化の潜熱は<2.453x百万ジュール/キログラム(20度のとき)>。よって1平方メートルあたり1mmの散水で地表から奪われる熱量は<2.453x百万ジュール/平方メートル>。
日中の市街地における顕熱量(大気を直接加熱する成分)を仮に1平方メートルあたり300W(ジュール/秒)とすると1平方メートルあたり1mmの散水は顕熱量の約2時間分に相当します。
1平方メートルあたり1mmの散水を散水可能な東京都区全体で考えた場合、面積280平方キロメートルで実施すると、必要量は約28万トンです。
※この水源は中水、雨水、河川水、工業用水、残り水(フロ)など
※ピーク電力需要の削減が目的のひとつであることから、正午以降に一斉に散水します。

3・効果

1平方メートルあたり1mmの散水でどの程度気温が下がるか、やってみないと正直なんともいえません(笑)。ただし予想では地上気温で2℃以上は低下すると思われます。
また試算では最大4-5%程度の電力量を削減できるのではないでしょうか。(ただし、あくまでも東京都区部の場合だけを対象として計算しています。もちろんこの実験が周辺に広がれば効果も大きくなるでしょう)


4・湿度や局地的豪雨への影響

湿度に関しては、特に当日のバックグラウンドの気象条件の影響が大きいと思います。たまたま打ち水した時が蒸し暑い日であれば、打ち水が逆効果になることも考えられなくもないですが、ただ、大気中の水蒸気量が多ければ、打ち水が蒸発する量は少なくなるので、湿度上昇量は、からっとした日よりは小さくなると想像されます。また、海風が吹いて、打ち水からの蒸発水分をしっかりと上空に輸送してくれれば、風による体感温度低減効果と相まって、湿度の影響を抑えてくれるはずです。
※ちなみに豪雨を誘発する程の水蒸気供給量ではないので、打ち水による夕立ちはご心配なく(笑)

5・去年の結果から打ち水の効果予測

以上を要約すると、「正午に打ち水する」場合、湿度は少々あがるかもしれないけれども、打ち水によってそれ以上の体感温度低減効果が期待できるということになるでしょうか。
去年の「大江戸打ち水大作戦」の結果※1から言えば、打ち水をした直後の気温はどこのポイントでも確実に1度以上の低下がありました。また同時に多くの人が「体感温度も下がった」との報告があり、正午でも打ち水によって「涼しく」なっています。ただ、打ち水したときに人間がどう感じるかというのは、気温、湿度や地表面からの輻射、風も含めた総合的な判断になります。また、そのときの状況や環境によってそれぞれが感じる「涼しさ」も違ってくるのではないか、と予測しています。たとえば浴衣を着た場合や、風鈴の音など聞きながらの場合なども、ヒートアイランドと化した都市の気温を下げるのに重要なファクターだと考えられます。よって今年は「官能測定※2」なども追加し、総合的に打ち水の効果をはかる予定です。 また「打ち水」の間、「風呂の残り水や、雨水、エアコンの室外機からでる水などの水の二次利用の促進」「クーラーなど冷房を止めるなどの省エネ効果」も期待できます。これについてもぜひ、測定を考えたいと思います。(更に災害時用に「水を貯める習慣」も期待できたり...いろいろ効果がありますね)

※1 去年の結果はコチラ→打ち水'03の結果

※2 打ち水官能測定について詳しくはコチラ→打ち水科学研究所

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